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のんびり創作ブログ。
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彼女の髪が好きだった。
昔からずっと、彼女の髪が好きだった。
*******


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【12日目/Side:I】

座長が新しいドレスを用意してくれた。
ゆったりした袖の、丈の長いロングドレス。
着てみると、脚が完全に隠れてしまうほどだ。
久しぶりに見た鏡の中の私は、戸惑ったような表情を浮かべている。

似合わない、気がする。
私にはこんな優雅なドレス、きっと似合わない。
それにこの、背中の大きく開いたデザインは、ちょっと恥ずかしい。

「似合うじゃないか。予想以上だ」

背後に立った座長が満足そうに頷く。

そう、だろうか。
座長は袖の形を丁寧に整えて、また頷いた。

「君は美しい。驕れとは言わないが、もっと自信を持てばいい」

そう言われると、恥ずかしい気持ちが少し、和らぐ気がする。

座長は私の髪を触っている。
癖、だと思う。
昔から、彼は二人きりの時はよく私の髪を触る。
頭を撫でるのではなく、髪の束の感触を楽しむように指に絡める。
そして必ず、こう言う。

「君の髪は本当に美しい」

今日も座長はそう言った。
表情は、俯いていてよく見えない。

昔は、なんて格好つけたことを言うのだろう、とか。
髪以外は別に、っていうことなの、とか。
そういう風に思ったこともあったけれど。
これは多分、癖みたいなもので、たいした意味はないのだろうと思う。
そういうものだと思う。
でも、座長がこうして誉めてくれるから。

この髪は、私の唯一の自慢、かもしれない。


一揆闘技大会用アイコン置き場。

***うちの***

●第1回●

■生徒会長



■カットイン




***PTメンバー・くろつき氏の闘技アイコン***

●第1回●

■風紀委員長

 


■保健室の先生




■風紀委員

第8期女子組で水着回。
ゾンビの水着とか誰も得しない




町の外れにある死体捨て場。その、大きな穴の中。
積み上がった死体の山の上に、二人分の新しい死体。
背の高い男と痩せた娘。
兄と、妹。
二人の体には首がない。
妹の首は兄の体の下に敷かれている。
兄の首は、何処にもなかった。
積み重なった死体。白骨。腐肉。そして、真新しい死体。
「ジャグラーか。サーカスにはぴったりじゃないかね?」

日が沈んだばかりの空に、気取った声が響く。
死体を啄んでいた鳥達が一斉に飛び立つ。

現れたのは派手な帽子を被った若い男。
立ち込める腐臭を気にも留めず、男は二人の死体の前に立った。
見下ろす貌は蝋のように白く、作り物めいた唇が笑みの形に歪む。
真っ暗な闇に塗り潰された双眸に、不気味な光がちらつく。
男の周りには黒い靄が漂い、どうやら鳥達を遠ざけたのはそれのようだった。

「ふむ」

男の右手にはステッキが、そして左手には、紋章の刻まれた革表紙の本があった。
紋章が赤く輝き、頁がひとりでにめくれていく。

《呪歌?へえ…これはなかなかレアだよ、ギー》

男の声ではない。
鈴の鳴るような少女の声。
その声が男に語りかける。
姿はない。
可憐な声色にふさわしい少女の姿は、何処にもない。

《呪われたのか魅入られたのか…どちらにしても、人が持つべきものじゃない》

《ねえギー、この娘を連れていくといいよ。きっと役に立つ》

「ふむ?僕はジャグラーが欲しかったのだがね。しかし、貴女がそう言うならこの娘も連れて行こうか」

《うんうん、それがいいよ》

「それにそうだね、兄と妹を引き離すのは心苦しいものだ。ほら、死んで尚妹の頭が鳥につつかれないように守っているなんて、泣かせるじゃないか?」

男は大仰な仕草でステッキを手近な死体に突き刺し、娘の首を拾い上げた。
品定めするように角度を変えて眺め回し、ひとつ頷いた。

「ふむ、なかなか可愛らしい顔をしている」

男の手から離れた本はふわふわと浮遊している。
時折羽ばたくように動き、頁の間から黒い靄が立ち上る。

「しかし、まずは首を繋ぎ合わせないといけないね。これでは歌えない」

《それなら心配ないよ。私の可愛い下僕達の中に、優秀な医者がいるからね。しっかり縫い合わせてくれるよ。ほら、調教師の子とか、君の顔を直してくれた彼だよ。ああ、君は彼のこと、あんまり好きじゃないんだっけ?》

医者と聞いた途端、男の顔にあからさまな嫌悪感が浮かんだ。

「僕はあの男は嫌いだ。だが…仕方ない、今回も頼るしかないようだね」

男は医者とやらを余程嫌っているのか、心底嫌そうな顔で溜息をついた。

《大丈夫だよー、そんな身構えなくても、取って食べたりしないってー》

「どうだかね」

少女の声はどこか能天気な響きだが、男の表情はますます険しくなったようだった。

「……下僕、ねぇ」

《うん? なぁに、ギーも私の下僕になりたいの?》

「……」

男は表情のない貌で本を見返した。
本は数秒完全に空中で停止した後、慌てたようにばさばさと開閉した。

《あは、冗談だよ!君が奉仕に全く向いてないってことは、よーくわかってるよ?》

「…僕の認識では、貴女は怪奇天幕のスポンサーなのだけどね?」

《うんうん、それでいいよ。貸してあげたあの子達、ちゃんとやってる?》

「そうだね、おかげさまでよく働いてくれているよ。何しろ僕では、彼らと契約することはできないからね。対価を払えないとは、この体も不便なものだ」

《あは、それはしょうがないね。まあ何にでも、いいところと悪いところがあるってことだよ!》

男はやれやれと首を振る。
本の方は、何か探すようにうろうろと飛び回り始めた。

《うーん、それにしてもお兄さんの方は、頭が何処にもないよねえ。野犬が持って行っちゃったのかな?》

「おやおや。まあ困りはしないだろう。代わりの頭は必要だが…此処にはあまり、良い素材はないようだ」

男は辺りを見回し、辟易したように首を振った。

《じゃあ行こうか。ここにはもう用はないよ》

急かすように、本が羽ばたく。

「そうだね」

男は短く答え、娘の首と目線を合わせるように持ち上げた。

「ようこそ怪奇天幕へ。歓迎するよ、お嬢さん(マドモアゼル)」

その呼びかけが王子のくちづけだったかのように。 
娘の真っ暗に塗り潰された瞳が開いた。

その横で、首のない体が二つ。
背の高い影と痩せた影が、ゆっくりと立ち上がった。


*******

歌を禁じられた歌姫よ。
歌うことが赦されなかったのなら、僕が赦そう。
その歌が愛されなかったのなら、僕が愛そう。
さあ、今宵より君は僕の歌姫だ。
怪奇天幕(われら)の為に歌ってくれたまえ。
その魂が潰えるまで。

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coqua(こか)
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爬虫類と骨とハイエナが好きです。
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