のんびり創作ブログ。
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【12日目/Side:I】
座長が新しいドレスを用意してくれた。
ゆったりした袖の、丈の長いロングドレス。
着てみると、脚が完全に隠れてしまうほどだ。
久しぶりに見た鏡の中の私は、戸惑ったような表情を浮かべている。
似合わない、気がする。
私にはこんな優雅なドレス、きっと似合わない。
それにこの、背中の大きく開いたデザインは、ちょっと恥ずかしい。
「似合うじゃないか。予想以上だ」
背後に立った座長が満足そうに頷く。
そう、だろうか。
座長は袖の形を丁寧に整えて、また頷いた。
「君は美しい。驕れとは言わないが、もっと自信を持てばいい」
そう言われると、恥ずかしい気持ちが少し、和らぐ気がする。
座長は私の髪を触っている。
癖、だと思う。
昔から、彼は二人きりの時はよく私の髪を触る。
頭を撫でるのではなく、髪の束の感触を楽しむように指に絡める。
そして必ず、こう言う。
「君の髪は本当に美しい」
今日も座長はそう言った。
表情は、俯いていてよく見えない。
昔は、なんて格好つけたことを言うのだろう、とか。
髪以外は別に、っていうことなの、とか。
そういう風に思ったこともあったけれど。
これは多分、癖みたいなもので、たいした意味はないのだろうと思う。
そういうものだと思う。
でも、座長がこうして誉めてくれるから。
この髪は、私の唯一の自慢、かもしれない。
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